事業再構築って?
事業再構築補助金では、「事業再構築」に取り組むことが要件の一つとなっています。
「事業再構築」とは、具体的に何を指すのでしょうか、補助金の公募要領や中小企業庁が示す「事業再構築指針」をもとに読み解いていきましょう。
まず事業再構築補助金って何?
事業再構築補助金は、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するために、新分野展開・事業転換・業種転換・業態転換・事業再編という思い切った事業再構築に取り組む中小事業者を対象とする補助金です。
従来の事業再構築補助金は、新型コロナウイルス等の影響によって売上が減少している事業者が主な対象とされていましたが、「成長が見込まれる分野へ進出する事業者」についても対象となるなど、より幅広く補助金制度が活用しやすくなりました。
「事業再構築」とは
公募要領において、「事業再構築」とは、「新市場進出(新分野展開、業態転換)」、「事業転換」、「業種転換」、「事業再編」、「国内回帰」のいずれかに取り組む事業を指すと示されています。
そして、『それぞれの類型の詳細については「事業再構築指針」にて公表』とも記載されていますので、次項からは指針に示されているそれぞれの類型について解説していきます。
(1)【事業再構築要件】について
本事業で支援の対象となる事業再構築は、「新市場進出(新分野展開、業態転換)」、「事業転換」、「業種転換」、「事業再編」、「国内回帰」を指します。
なお、「事業再構築」の類型の詳細については、「事業再構築指針」にて公表しています。
新市場進出
まずは1つ目の「新市場進出」です。事業再構築指針において、新市場進出については以下の要件をすべて満たすものと定められています。
- 製品等の新規性要件
-
事業により製造する製品、商品、サービス、またはそれら提供方法が自社にとって新規性を有すること。具体的には、以下の要件を満たすものを指します。
- 過去に製造等をした実績がないこと
- 定量的に、性能又は効能が異なること又は比較が難しいこと
- 「従来製品と比べて、耐久性が◯◯%向上している」など
- 市場の新規性要件
-
事業により製造する製品、商品、サービスの対象市場が、自社の既存事業とは別の顧客を対象とする新たな市場であること。
- 事業売上高10%要件
-
3~5年の事業計画期間の終了後、新製品(商品・サービス)の売上高が、総売上高の10%以上を占める見込みがあること(または自社の総付加価値額の15%以上を占める見込みがあること)
事業転換
続いて、「事業転換」について見ていきましょう。
事業転換とは、中小企業等が新たな製品等を製造等することにより、「①主たる業種を変更することなく、②主たる事業を変更すること」とされています。
ここで、「業種」とは、日本産業分類上の大分類を指し、「事業」とは、中分類~細分類を指します。
日本料理店が、焼肉店を新たに開業し、3年間の事業計画期間終了時点において、焼肉事業の売上高構成比が、標準産業分類の細分類ベースで最も高い事業となる計画を策定している場合
- 大分類
-
宿泊・飲食サービス業(変わらず)
- 細分類
-
日本料理店(7621)
焼肉店(7625)
大分類は宿泊・飲食サービス業で変化はありませんが、焼肉店としての売上が自社事業で最も多い売上高となる計画を策定する場合は事業転換に該当します。
また、「事業再構築」の具体要件として、以下の条件をすべて満たすことも求められます。
- 製品等の新規性要件
-
事業により製造する製品、商品、サービス、またはそれら提供方法が自社にとって新規性を有すること。具体的には、以下の要件を満たすものを指します。
- 過去に製造等をした実績がないこと
- 定量的に、性能又は効能が異なること又は比較が難しいこと
- 「従来製品と比べて、耐久性が◯◯%向上している」など
- 市場の新規性要件
-
事業により製造する製品、商品、サービスの対象市場が、自社の既存事業とは別の顧客を対象とする新たな市場であること。
- 売上高構成比要件
-
3~5年間の事業計画期間終了後、新たな製品等の属する事業が、売上高構成比の最も高い事業となる計画を策定すること
業種転換
3つ目は、「業種転換」について見ていきましょう。
業種転換とは、中小企業等が新たな製品等を製造等することにより、「主たる業種を変更すること」とされています。
ここで、「業種」とは、日本産業分類上の大分類を指します。
建設業を営む事業者が、アウトドア需要の増加に着目して民泊施設を新たにオープンし、3年間の事業計画期間終了時点において、民泊施設経営を含む業種(この場合は宿泊・飲食サービス業)の売上高構成比が、自社で最も高い事業となる計画を策定している場合
- 大分類
-
建設業 ➡ 宿泊・飲食サービス業
建設業から宿泊・飲食サービス業にガラっと変化(大分類レベルでの変化)するため、業種転換となります。
また、「事業再構築」の具体要件として、以下の条件をすべて満たすことも求められます。
- 製品等の新規性要件
-
事業により製造する製品、商品、サービス、またはそれら提供方法が自社にとって新規性を有すること。具体的には、以下の要件を満たすものを指します。
- 過去に製造等をした実績がないこと
- 定量的に、性能又は効能が異なること又は比較が難しいこと
- 「従来製品と比べて、耐久性が◯◯%向上している」など
- 市場の新規性要件
-
事業により製造する製品、商品、サービスの対象市場が、自社の既存事業とは別の顧客を対象とする新たな市場であること。
- 売上高構成比要件
-
3~5年間の事業計画期間終了後、新たな製品等の属する事業が、売上高構成比の最も高い事業となる計画を策定すること
事業再編
4つ目は、「事業再編」について見ていきましょう。
事業再編とは、①会社法上の組織再編行為等を交付決定後に行い、②新たな事業形態のもとに新市場進出(新分野展開・業態転換)、事業転換、業種転換のいずれかを行うことを指します。
交付決定を受けた後に、「組織再編行為等」を行い、更に前述した1~3までの事業再構築に取り組まなければならない、少し特殊な事例となります。
なお、「事業再編行為等」とは、会社法上の「合併・会社分割・株式交換・株式移転・事業譲渡のいずれか」とされています。
国内回帰
最後に、「国内回帰」について見ていきましょう。
「国内回帰」とは、海外で製造等する製品について、その製造方法が先進性を有する国内生産拠点を整備することを指します。
自社の取引先が、部品の国内調達を強化するため増産を要請してきた。
そこで、これまで海外で生産していた部品について、国内に最新生産設備を導入した拠点を整備するとともに、5年間の事業計画期間終了後、総売上高の10%(または総付加価値額の15%)以上を占める計画を策定した。
また、「事業再構築」の具体要件として、以下の条件をすべて満たすことも求められます。
- 海外製造等要件
-
事業により製造する製品について、自社で海外製造・調達をしており、国内に生産拠点を整備する計画を立てていること。
- 導入設備先進性要件
-
補助事業により導入する全ての設備が特注品又は製造機器メーカーの最新カタログに掲載されているもの(またはこれに相当するもの)であること
導入する設備の効果を、定量的に説明できること
- 売上高10%要件
-
3~5年の事業計画期間の終了後、新製品(商品・サービス)の売上高が、総売上高の10%以上を占める見込みがあること(または自社の総付加価値額の15%以上を占める見込みがあること)
注意点
市場の新規性要件に該当しないもの
新市場進出(新分野展開・業態転換)、事業転換、業種転換を行う場合、「市場の新規性要件」が求められますが、既存の事業で対象としている市場から顧客層に変化がない場合は「市場の新規性要件」には該当しないこととなります。
例えば、次のような場合は、市場の新規性要件には該当しません。
- 既存商品とは別のものを取り扱うが、対象とする市場が同一である場合
- 「単に、アイスクリーム屋がカキ氷を新発売する」など、対象とする顧客層に変化がなく、既存商品の需要と新製品の需要がバッティングする場合には新市場とは呼べないため要件に該当しません。
「季節限定商品を使用した高価格路線で新たな顧客層を狙う」など既存商品との差別化が必要です。
- 「単に、アイスクリーム屋がカキ氷を新発売する」など、対象とする顧客層に変化がなく、既存商品の需要と新製品の需要がバッティングする場合には新市場とは呼べないため要件に該当しません。
- 既存商品の市場の一部のみを対象とするものである場合
- 「アイスクリーム屋がバニラアイス好きに特化した事業展開を行う」など、従来の顧客層を単に絞り込むような事業も市場の新規性要件には該当しません。
- 既存の商品について単に商圏を変えたものである場合
- 「A駅周辺で展開していた店を、そっくりそのままB駅周辺に新規出店する」ような場合も、顧客層に変化がないものと見なされ、市場の新規性要件には該当しません。
まとめ
「事業再構築」に当てはまる5つの類型についてご案内いたしました。
事業再構築要件を満たすことが補助金申請の申請条件となっていますので、今一度、自社の新事業がどの類型に当てはまるかを考えて内容を事業計画書に落とし込んでいきましょう。
当事務所では、申請書類の作成サポートをはじめとした補助金に関連する手続きの支援業務を取り扱っております。
「書類に何を書けばいいのかわからない」、「一人で申請するのは難しい」、「新事業を始めたいが、どんな補助金があるのか」など、お困りごとがあればお気軽にお問い合わせください。