【農薬散布】ドローンを使った農薬散布についてのルールを確認

ドローンの飛行にはルールがあります

ドローンの飛行については、様々な法令で規制されています。
法令に違反すると、業務の失注や信用失墜だけでなく、懲役刑や罰金刑などを課されることがありますので事前に法令をよく確認をして適正な飛行を心がけましょう。

また、航空法以外にも、他の法律や条例等によって制限されていることもありますので日頃から法令には細心の注意を払ってドローンの飛行を行いましょう。

contents

ドローンを使用した農薬散布に関連するルール

Phase
  • 許可の種別を確認
  • 農薬を散布するための体制
  • 飛行マニュアルをチェック
  • 飛行計画の通報
Phase
  • ドローンで使用可能な農薬

航空法に関連する決まり事

許可の種別を確認

ドローンを使用して農薬を散布する場合、主に以下の許可が必要です。
必要な許可を取得せずに飛行させた場合には罰則の対象となりますので、許可をお持ちの方は改めて自身の許可証を見直してみましょう。

包括許可では飛行させられない場所・方法に注意

以下の飛行を行う場合は、飛行の経路(場所)や日時を特定する必要があるため、飛行範囲を全国等とする包括許可では飛行させることができず、個別に許可が必要となります。
夜間の目視外飛行や夜間の人口集中地区での飛行に該当する場合も個別許可が必要となりますので注意しましょう。

飛行経路を特定する必要がある飛行
  • 空港等周辺における飛行
  • 地表または水面から150m以上の高さの空域における飛行
  • 人又は家屋の密集している地域の上空における夜間飛行
  • 夜間における目視外飛行
  • 補助者を配置しない目視外飛行
  • 趣味目的での飛行
  • 研究開発目的での飛行
飛行経路と飛行日時を特定する必要がある飛行
  • 人又は家屋の密集している地域の上空で夜間における目視外飛行
  • 催し場所の上空における飛行
引用:包括申請のご案内(国土交通省・pdf)

農薬を散布するための体制

農薬散布のための許可として特に重要な「危険物輸送」、「物件投下」について、許可取得および実際の運用に必要な体制について要件が定められていますのであらためて確認しておきましょう。

注意事項

ドローンの飛行許可証には、パイロットごとに飛行させることができる機体が指定されています。
許可された内容に反して飛行させた場合には罰則の対象となりますので注意してください。

危険物輸送について

機体に危険物の輸送に適した装備が備えられていること。

農薬の外部流出を防ぐために、農薬に適合する材質のタンクを装備して飛行させなければなりません。
また、タンクは飛行中に脱落しないような方法・強度で装着されてなければなりません。

意図した飛行経路を維持しながら無人航空機を飛行させることができる操縦者であること

飛行許可全般のことですが、許可の取得には10時間以上の飛行経歴を有することが原則となっています。
また、許可取得時に提出している飛行マニュアルにおいて技量の習得・維持の方法についても定めているかと思いますので、許可取得後も練習を怠らないようにしましょう。

第三者の上空で無人航空機を飛行させないよう、安全確保のための必要な体制をとること

飛行場所の事前確認、飛行経路の設定、第三者の立ち入りを制限する措置(補助者の配置等)、気象状況の確認など、安全確保のための体制をしっかりと構築しましょう。

物件投下について

機体について、不用意に物件を投下する機構でないこと。

散布装置について、不用意に物件が透過されることがないよう安全に散布ができる機構のものを採用する必要があります。

5回以上の物件投下の実績を有し、物件投下の前後で安定した機体の姿勢制御ができること。

物件投下は、原則、5回以上の投下経験を持つ者が行う必要があります。

第三者の上空で無人航空機を飛行させないよう、安全確保のための必要な体制をとること
  • 物件を投下しようとする場所に、無人航空機の飛行状況及び周囲の気象状況の変化等を常に監視できる補助者を配置し、補助者は、無人航空機を飛行させる者が安全に飛行させることができるよう必要な助言を行うこと。
  • 物件を投下しようとする場所に、第三者が立ち入らないように注意喚起を行う補助者の配置等を行うこと。
補助者を配置せずに物件投下を行う条件

補助者を配置せずに(または、補助者の配置に代わる措置を取らずに)物件を投下する場合には、次に掲げる基準を守ることが必要です。

  • 物件投下を行う際の高度は1m以下とする。
  • 物件投下を行う際の高度、無人航空機の速度及び種類並びに投下しようとする物件の重量及び大きさ等に応じて、物件を投下しようとする場所及びその周辺に立入管理区画を設定すること。
  • 当該立入管理区画の性質に応じて、飛行中に第三者が立ち入らないための対策を行うこと。

飛行マニュアルをチェック

飛行マニュアルには、散布の方法や条件などが細かく定められています。
例えば、国交省が公開している物件投下用の飛行マニュアルには以下のような記述があります。

航空局標準マニュアル(空中散布)

3.安全を確保するために必要な体制
3-1 無人航空機による空中散布を行う際の基本的な体制
(1)場所の確保・周辺状況を十分に確認し、第三者の上空では飛行させない。
(2)風速5m/s以上の状態では飛行させない。
(3) 雨の場合や雨になりそうな場合は飛行させない。
(4) 十分な視程が確保できない雲や霧の中では飛行させない。
(5) 飛行させる際には、安全を確保するために必要な人数の補助者を配置し、相互に安全確認を行う体制をとる。なお、塀やフェンス等を設置することや、第三者の立入りを制限する旨の看板やコーン等を飛行範囲や周辺環境に応じて設置することにより立入管理区画を明示し、第三者の立入りを確実に制限することができる場合は、これを補助者の配置に代えることができる。
(6) 補助者は、飛行範囲及び散布範囲に第三者が立ち入らないよう注意喚起を行う。
(7) 補助者は、飛行経路及び散布範囲全体を見渡せる位置において、無人航空機の飛行状況、散布状況及び周囲の気象状況の変化等を常に監視し、操縦者が安全に飛行させることができるよう必要な助言を行う。
(8) ヘリコプターなどの離発着が行われるなどの航行中の航空機に衝突する可能性があるような場所では飛行させない。
(9)第三者の往来が多い場所や学校、病院、神社仏閣、観光施設などの不特定多数の人が集まる場所の上空やその付近は飛行させない。
(10)高速道路、交通量が多い一般道、鉄道の上空やその付近では飛行させない。
(11)高圧線、変電所、電波塔及び無線施設等の施設付近では飛行させない。
(12)飛行場所付近の人又は物件への影響をあらかじめ現地で確認・評価し、補助者の増員等を行う。
(13)人又は物件との距離が30m以上確保できる離発着場所を可能な限り選定するとともに、周辺の第三者の立ち入りを制限できる範囲で飛行経路を選定する。
(14)飛行場所に第三者の立ち入り等が生じた場合には、直ちに散布を中止しかつ速やかに飛行を中止する。
(15)人又は家屋が密集している地域の上空では夜間飛行は行わない。
(16)人又は家屋が密集している地域の上空では目視外飛行は行わない。ただし、業務上、やむを得ず飛行が必要な場合は、常時操縦者と連絡を取り合うことができる補助者の配置を必須とし、飛行範囲を限定して不必要な飛行をさせないようにする。さらに、一定の広さのある場所を飛行させるとともに、経路下における第三者の立ち入りについて制限を行い、第三者の立ち入り等が生じた場合は、速やかに飛行を中止する。また、突風などを考慮して当該場所の付近(近隣)の第三者や物件への影響を予め現地で確認・評価し、補助者の増員等を行う。
(17)夜間の目視外飛行は行わない。
(18)農薬の空中散布にあたっては、その安全な使用のため、農薬取締法等関連法令
に基づくとともに、「農薬の空中散布に係る安全ガイドラインの制定について」(令和元年7月30 日付け元消安第1388 号)等関連通知に留意して実施する。
(19)操縦者は、空中散布のための操縦訓練を修了した者に限る。

国土交通省標準マニュアル(空中散布)

例えば、日の出時刻より前の飛行であれば早朝の時間帯であっても「夜間飛行」となりますので、この時間帯に目視外飛行を行うと飛行マニュアル違反(上記(17)の違反)となり、50万円以下の罰金の対象となってしまいます。
抜粋した部分以外にも、飛行マニュアルには様々なルールが定められています。
飛行マニュアル違反には罰則がありますので、飛行前にあらためてマニュアルを確認し、遵守を徹底しましょう。

飛行計画の通報

ドローンを使用して農薬散布(危険物輸送・物件投下)を行う際には飛行計画の通報が義務付けられています。
飛行計画の通報を行わずに飛行させた場合には30万円以下の罰金の対象となります。

農薬取締法と空中散布

農薬の使用については、農薬取締法という法律に定められています。
使用できる農薬は、農林水産省が登録した農薬に限られており、「対象作物」・「使用時期」・「使用量」・「使用方法」などの使用基準を遵守して使用なければなりません。
使用基準に違反して農薬を使用した場合には罰則の対象となります。

ドローンで使用可能な農薬

ドローンで使用可能な農薬については農林水産省のホームページで公表されています。
ドローンでの散布に適した農薬は、「使用方法」が、<無人航空機による散布>、<無人ヘリコプターによる散布>、<無人航空機による滴下>、<無人ヘリコプターによる滴下>とされている農薬です。
また、使用方法に散布機器が指定されていない<散布>、<全面土壌散布>などとなっている農薬についても、その使用方法をはじめ、希釈倍率、使用量等を遵守できる範囲であれば、ドローンを用いて空中散布することが可能です。

農薬を散布する際には、使用方法・使用量などを確認し、適正な農薬利用に心がけましょう。

農薬の空中散布に係る安全ガイドライン

無人航空機(ドローン)による農薬の空中散布を行う者が、安全かつ適正な農薬使用を行うための参考となるように農林水産省がガイドラインを示していますので内容を確認しておきましょう。

農薬の空中散布の実施

以下のような、実施計画の作成・近隣への周知・飛散防止措置などについて記述されています。

  • 実施場所、実施予定月日、作物名、散布農薬名、10a当たり使用量・希釈倍数等について記載した計画書を作成する。
  • 農家との受委託関係による散布を実施する場合は、十分に連携して計画書を作成する。
  • 機体登録、飛行許可、飛行計画の通報、飛行日誌の記載など航空法の決まりごとを遵守する。
  • 散布実施区域及びその周辺に学校、病院等の公共施設、家屋、蜜蜂の巣箱、有機農業が行われている圃場等がある場合には、危被害防止対策として、当該施設の管理者及び利用者、居住者、養蜂家、有機農業に取り組む農家等に対し、農薬を散布しようとする日時、農薬使用の目的、使用農薬の種類及び実施主体の連絡先を十分な時間的余裕を持って情報提供し、必要に応じて日時を調整する。
  • 天候等の事情により散布日時等に変更がある場合、変更についての情報提供を行う。
  • 実施区域周辺において人の往来が想定される場合、作業中の実施区域内への進入を防止するため、告知、表示等により農薬の空中散布の実施について情報提供を行うなどの必要な措置を講ずる。
  • メーカーが取扱説明書等に記載した散布方法(飛行速度、飛行高度、飛行間隔及び最大風速。別添参照。)を参考に散布を行う。
  • 周辺環境等への影響に十分配慮し、風下から散布を開始する横風散布を基本に飛行経路を設定する。
  • 強風により散布作業が困難であると判断される場合には、無理に作業を続行せず、気象条件が安定するまで待機する。

事故発生時の対応

航空法で定められている事故対応だけでなく、農薬事故(農薬の流出など)についての対応についても記述されています。実際に飛行させる前に一読しておきましょう。

  • 農薬事故(流出・ドリフトなど)に該当する事故が発生した場合は、実施主体は、事故報告書を作成し、実施区域内の都道府県農薬指導部局に提出し、必要に応じて警察・消防への通報や国土交通省への事項報告等を行う。
  • 無人航空機による事故(人身事故・物損事故)が発生した場合には、警察・消防への通報などの安全確保措置を取るとともに、国土交通省に事故報告を行う

まとめ

ドローンを用いた農薬散布は、航空法だけでなくその他の法令や近隣との調整・情報の周知徹底が求められています。
コンプライアンスに違反した飛行を行うと、業務の失注や信用失墜だけでなく懲役刑や罰金刑などが課されることもありますのでルールを正しく理解し、適正な運用を心がけましょう。

当事務所では、機体登録・飛行許可の取得・飛行場所の法令チェックなどドローンに関する様々なサービスを提供しています。
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